妻のバイクにはトップチューブに"Super High Modulus(超高弾性)"と書いてあるラベルがあります。これは使用しているカーボンファイバーのことを指しているのだと思いますが、私のCervélo R5ではどこにもそのような素材については述べられていません。妻のバイクは私のバイクより良いものなのでしょうか?

 

当社のフレームがどのような弾性なのかを聞かれることが多いのですが、その答えは大変シンプルで、同時に大変複雑です。

シンプルな答えは次の通りです。当社は製造するすべてのフレームで多くの種類のファイバーを使用しています。ですが、複雑すぎてフレームのステッカーにまとめたり、マーケティング用の名前をつけることができません。"High modulus(高弾性)"という用語は「軽量で剛性が高い」という概念を表す記号となった一方で、強靭さや快適性といった重要な特質を示すものではありません。まず初めに、すべてのバイクメーカーもカーボンファイバーを使用するその他の産業も同じカーボンファイバーを利用しているということを理解しておくことは重要です。Boeing 787 Dreamliner三機だけでバイク産業全体が1年に使うより多くのカーボンファイバーを使うため、サイクリング分野では特殊なファイバーを自分たち用に用意することができないのです(残念なことに、世界経済におけるヒエラルキーの中でジャンボ機製造はバイク製造に優先されています)。しかしながら、あるカーボンファイバーのフレームを他のカーボンファイバーのフレームを区別するものとは一体何でしょうか?まず、バイクのフレームやフォークのどこにどのようにカーボンファイバーが使用されるのかという点に強く影響されます。また、比較的程度は低いですが、どのファイバーが使用されるかにも関係があります。カーボンファイバーの弾性をマーケティングのツールとして利用することにおける非常に現実的な問題の一つは弾性に一貫した尺度がないことです。ある会社の「超高弾性」が他の会社の中程度の弾性であることもあります。

弾性についての通説を理解するにはまず、材料の選択を左右する2つの特性、強靭さと剛性ついて考えなくてはなりません。ここでは強靭さとは材料が壊れる(機能しなくなる)までかけることができる力の量と定義します。強靭さとしばしば混同されますが、剛性とは力がかけられた時に物質が変形する量です。より剛性の高い材料はより剛性の低い材料と比べ同じ力をかけても変形の量が少なくなります。

弾性(さらに具体的に言うとヤング率)は材料の剛性を表すエンジニアリング用語です。当社ではしばしば弾性(もしくは剛性)の概念を、家庭内にある輪ゴムと乾燥スパゲッティとで説明します。輪ゴムは折れることなく(永久に変形することなく)簡単に形を変え、曲げることができるという意味で大変強いものです。力を加えるのをやめれば元の形状に戻ります。輪ゴムを破壊するのは大変難しいですが、変形させるにはほとんど力が必要のない高い柔軟性があります。調理前のスパゲッティはその反対です。大変固く、最終的に折れてしまうまで変形に抵抗します。つまりあまり強いものではありません。輪ゴムを低弾性、スパゲッティを高弾性のカーボンファイバーと考えてください。高弾性のファイバーを使用したバイクはかなり剛性が高いのだ、と誇ることができるでしょう。ですが、スパゲッティがどうなったかを考えるとどうでしょうか?高弾性のカーボンファイバーは剛性は高いかも知れませんが、あまり強くはありません。つまり、スパゲッティのように低弾性のファイバーよりもより少ない力で破壊されてしまうのです。簡単に言うと、より高弾性の(剛性が高い)ファイバーはまたより弱くもあり、より低弾性のファイバーは一般的により強靭(破壊するのがより難しい)なのです。また、より高弾性のファイバーはより低弾性のファイバーよりずっとコストが高く、場合によっては10倍もの差があることを知っておくことは重要です。

バイクメーカーがエンジニアリングの詳細により注意を払えば、より良いバイクを製造することができます。正しいファイバーの弾性を選択するプロセスはマーケティングで主導することはできません。エンジニアが荷重条件を理解し、パフォーマンスを最適化することができる、詳細なFEAやラミネーション分析によって行われるものです。現実世界のライディングとテストと設計の間の違いを知って初めて、正しい場所に正しいファイバーを使用し、より高パフォーマンスのフレームを製造することができます。素敵なマーケティング用の名前は必要ありません。