サイクリストに生じる不快感:TT/Triポジションへの適応

快適性は、イベントが行われている間ポジションを維持する能力として定義されます。不快であることが原因でポジションを維持または保持できなくなってしまっては、元も子もありません。

 

バイクに乗っているサイクリストが受ける全抵抗のうち、80 から 90 パーセントは空気抵抗です。 したがって、その抵抗を減らすことができれば、サイクリストは同じだけの力でより早い速度を保つことができます。​​​​​​​

タイムトライアル/トライアスロンバイクを購入することは、「スピード」を購入することでもあります。というのは走行時の空気抵抗を減らすためのポジションが取れるからです。けれども、サイクリストのスピード向上力に最も影響を与えるのはエアロダイナミクスではありません。実は、快適性が問題なのです。

私が考えるスピードの方程式: スピード=快適性+力+エアロダイナミクス

快適さは走行中のポジションを維持できるかどうかで決まります。それはワールドツアーのライダーでも、アイアンマンのチャンピオンでも、趣味でライドを楽しんでいる人でも同じ。不快であるがためにポジションを維持することができないことほど致命的なことはありません。​​​​​​​

ここでは、適応力という観点から快適性についてお話しします。おそらくほとんどのアスリートは、次の3つのシナリオの少なくともひとつに当てはまることでしょう。

1. 初めてタイムトライアル/トライアスロンバイクを購入した。

2. ポジションを徹底的に見直し、フロントエンドを大幅に低くした。

3. タイムトライアル/トライアスロンのポジションを長い間実践していない。

快適なポジションがなかなか得られない時は、 「タイムトライアル/トライアスロンのポジションは自然な体勢ではないため、適応するまでに時間がかかる!」と思ってください。

このことについては理解が必要なのですが、過小評価や説明不足が走りに満足できないサイクリストを数多く生み出していて、実際に路上でも不適切なポジションで走っている人をたくさん見かけます。この適応期間は誰しもがいつかは経験しなくてはなりません。私の目標は、その段階を説明することですべての主体(バイクメーカー、ショップ、フィッター、サイクリスト)がよりスムーズにシフトできるようにすることにあります。

よく不快を感じる部分

私はクライアントを相手にする際、適応段階について説明するようにしています。走行中に不快を感じる可能性のあるエリアを複数指摘し、新しいポジションで起こり得ることを明確にするわけです。これによって、最初に不快を感じたときに調整が必要かどうかの判断も可能になります。

こうした透明性は信頼につながり、サイクリストとフィッターとのコミュニケーションが生まれるほか、何か問題があったときもクライアントはまず担当フィッターにコンタクトするようになります。最初からうまく行くとは限りませんが、フィッターがしっかりしていれば、後々調整しやすいベストなポジションが得られます。

先にもお話ししましたが、タイムトライアル/トライアスロン ポジションのねらいは、走行時にエアロダイナミクスの姿勢が取れるようにすることで、それによって骨盤と肩が前方にリズムよく回転します。実はこの前方回転が不快感の原因でもあるのです。

サドルの不快感

サドルは、タイムトライアル/トライアスロン ポジションにおいて最も重要なコンポーネントです。望ましいポジションでは、骨盤がある程度前方に回転する必要があり、サドル前方で回転運動をすることで感受性の高い軟組織部分に圧力がかかってしまいます。サドルメーカーはタイムトライアル/トライアスロンに特化したサドルを作り、圧力が坐骨や恥骨枝といった骨質の部分だけにかかるようにすることでこの問題に対処していますが、ただ、私たちはそうした箇所に体重をかけることに慣れていないため、やはり違和感を覚えます。

サドルはフィッティングセッションで素晴らしい感触が得られても、いったん路上に出ると不快を感じることがあります。私はこのことについてクライアントに話し、骨と軟組織が適応するまで1〜3週間ほど様子を見るよう伝えています。不快感が耐えられないほどの場合や、期間過ぎても不快な状態が続く場合は、別の手立てを講じなければなりません。

また、ショップやアスリートには、ほとんどのサドルメーカーが提供しているサドル デモプログラムを利用するよう勧めています。私たちもサドル選びに役立つさまざまなツールや情報を持っていますが、実際の走行では、クライアントのフィードバックと試行錯誤を基に最終的な決定を行うべきです。

肩の不快感

タイムトライアル/トライアスロン ポジションでは前方回転によって、フロントエンドに普段以上の体重がかかります。フロントエンドは低ければ低いほど、支える体重は大きくなりますが、ポイントは体重を骨格として支えていることであって、これは肘をアームカップの上に適切に乗せることと、前後のバーのポジショニングによって実現します。ただ、うまくフィットしていても初めのうちは肩の不快感を覚えることがあります。

首の不快感

日常生活においては、私たちは「ニュートラルスパイン」と呼ばれる中立姿勢で歩行しています。低いタイムトライアル/トライアスロン ポジションでニュートラルスパインの姿勢をとると、前輪をまっすぐ見る格好になります。進行方向を見るためには、首を不自然に伸ばして前を見上げなければなりません。ニュートラルスパインの姿勢で顎を上たたまま、頭全体を起こす形です(潜望鏡ヘッドとも)。インパクトを最小限にすることは可能ですが、この不自然な頭/首の体勢に慣れなければなりません。

なぜ注意が必要?

私がサイクリストのフィッティングを行う時は、新しいポジションに適応するまでにどのようなこと起こりうるのかオープンに話しています。短い時間で適応する人、そうでない人さまざまですが、前述した不快感を何も経験しないというケースはほとんどありません。確かなのは、体はいずれタイムトライアル/トライアスロン ポジションに慣れ、不快感は和らぐということです。

これで、取り組みに乗り出して不快を感じた時のクライアントの心得ができました。突然変更をしたり、問題を疑ったりするのではなく、落ち着いて「Matがこのことについて言っていた。様子を見なければ」と考えられるわけです。

もしもこうした情報を知らず、さらにフィッターがフィットの良さと速さを強調して売り込んでいたとしたら、あらゆることが起こりうるでしょう。そのシナリオをいくつかあげます(これらは一部で、例はたくさんあります):

1. フィッターがクライアントから二度と連絡を受けることがない。クライアントは30分ほど走っただけでポジションの違和感を覚えたが、フィッターがそうしたことについて知らないと思い込んでいる。

2. クライアントがバイクのフィットに対する信念を失い、自分で何とかしようとする。不快感はいずれなくなるにも関わらず、それを軽減しようと情報不足のままポジションを修正する。

3. クライアントが別の店を訪ねてフィッターに会う。そのフィッターはフィットを直すか、適応段階について説明だけを行う。

4. クライアントが不当に不快感をバイクのダウンチューブにせいにする。

5. 走行中の不快感との戦いに疲れた結果、クライアントのサイクリングに対する愛着が失われる。

まとめ

結論:タイムトライアル/トライアスロン ポジションは自然な体勢ではなく、最初は違和感を覚えるものです。けれども体には適応性があるため、不快な箇所は徐々になくなっていきます。このコンセプトを理解していれば、待って様子を見る時とフィット調整を行う時の見当がつき、フィッターもクライアントも自信を持って適応期間を乗り越えることができます。