Cervéloのリードグラフィックデザイナー、Tom Briggsはスポンサー付きプロアスリートやチームに加え、当社の新モデルや改良モデルに数多くのデザインを創り出してきました。ここでは数多くのプロジェクトの中から2つのプロジェクトについて探り、塗装テクノロジーをはじめ、Cervéloが様々な方法でバイクデザインの限界を押し上げてきた原動力について紹介します。

 

 

過去4年の間、Cervéloは塗装方法やグラフィックの施し方において全く新しい方向性に進んでいます。シンプルな美しさは打ち出すけれどあまり魅力的とは言えない、どれも同じ外観を生み出す型にはまった表面仕上げは、今では過去の産物となりました。塗装は市場での需要にかかわらず、自転車メーカーとしてCervéloが本質的に創るものとは結び付いておらず、二の次として捉えられていました。ジオメトリ、重量、剛性、そしてエアロダイナミクス性能など、当社は積極的なアプローチを取っています。では、なぜ塗装にも同じ様にできないのか?と考えました。今がそれを変える時です。

革新のために違う方法を取り入れたことを示す2つの良い例は、英国のために2016年オリンピック用に開発したバイクと、 2017および2018 ツール・ド・フランスでMark Cavendishが使用したS5です。注目度の高いこのイベントでバイクを目立たせることは非常に重要なことです。それを最軽量のバイクでどうやって実現するのか?通常、多くの色を使うことは、それだけ重量が増えるということです。ですが、フレーム製作の際に1~2 グラム削ぎ落しただけは、あまり意味がありません。そこで、表面仕上げでできることの限界に挑戦する必要がありました。

T5GB
T5GB

これを当社だけで引き受けられる作業ではないと悟ったため、コーティング技術において最先端を行くパートナーを選ぶ必要がありました。私たちは、ペイントだけに限らず、新しい材料や塗装治術を探し始めました。ペイントをまったく使用しないケースも考慮しました。そうした努力は、ビジュアルの面では何一つ犠牲にせず、バイクのパフォーマンスを向上させることだけに集中させました。

材料を追求する段階で、英国のオリンピック用バイク、T5GBを製作するために当社はSilverstone Paint Technology (SPT)と提携しました。SPTのチームによるフォーミュラ 1での経験はまさにうってつけだったのです。SPTの共同創業者であるMark Turnerは以前、彼の兄弟であるRobとMattとオートレース界の塗装に手を広げる前に、ヨルダンのF1で何年も仕事をした経験がありました。

バイクのペインターについて語るのは、熟練した職人について語ることとよく比べられますが、SPTでは「化学者」と呼んだほうが近いでしょう。SPTの技術は精密かつ化学に基づいているため、当社はサイクリング業界においてかつて入手不可能だった材料を吟味できるようになりました。塗料には特有の重さがありますが、SPTは複雑な化学の力により、 F1で使用された最も軽い塗料の調合を実現しました。これが、T5GBのために選ばれた塗料です。最先端の技術とSPTの高度な塗装プロセスを組み合わせることで、使用する塗料の総量は大幅に削減しました。通常の過程で150グラムほど必要な塗料が、リオデジャネイロオリンピックで使われたT5GBの最終的なモデルには、ほんの24.6グラムにまで減らすことができたのです。

バイクの重量を全体的に減らすことはとても重要なことですが、オリンピックやツール・ド・フランスといったレースでは、どのブランドもビジュアルの面でも競い合うものです。大勢の中から存在感を際立たせるには人を惹きつけるビジュアルが必要ですが、国際的なチームに協力するにはいくつもの許可を得なければなりません。

新しいバスルームの色をパートナーと選ぶ際、ベージュかホットピンクかで意見が分かれるといった経験をしたことがありませんか?その状況を拡大し、国を代表するチームに当てはめてみてください。そうすれば、リオデジャネイロに向けた英国自転車連盟によるこのプロジェクトに課される厳しい審査について想像できると思います。

私たちは最大限に努力することを望み、ロゴとロゴの位置に関するIOCの規則に従いながらも存在感を際立たせられるよう、リオの競輪場に配置されるカメラについて研究しました。

そしてカメラで正確に表現される色について精査しました。それには、目で見るのと、HDテレビを通して見るのとでは全く違って見える色を使うことも含まれていました。6日間の競技の最中、リオの競輪場で観戦する最大収容人数の30,000人と、テレビを通して観戦する19億人(ライブで観戦する1人に対し、テレビ観戦者は64万000千人)では、テレビを通して色が正確に伝わる方がより重要だと考えました。

超軽量の塗料のおかげで、チームGBは6つの金メダル、4つの銀メダル、そして1つの銅メダルを獲得し、2つの世界記録を樹立しました。

一年後、リオで得た知識をツール・ド・フランスでは、Mark CavendishのS5に活かしました。このケースでは、塗料やプライマーをベース素材に使用せず、分子テクノロジーを採用しました。これにより、ごく少量の材料でバイクはメタリックフィニッシュを実現し、鏡面仕上げからはファイバーの繊維が透けて見えるほどです。無塗装のフレーム重量に加わった材料の重さは、ほんの1グラムです。

Cavがチームに溶け込んで見えることは大切ですが、私たちは彼のバイクが「ディメンションデータ」の中心的存在になることを望みました。しかし、それには色を際立たせることが重要だったので、当社のパートナーであるSPTが、あらゆる選択肢の中から最高に目立つ仕上がりにすることに協力してくれました。

Mark Cavendishのような人のために取り組むことは、私たちにとって非常に大きなチャレンジでもあります。常に特殊な製品や試作品を使える人に特別な物を作れるのか?私たちがより軽量でより速いバイクの製作方法を探る必要があることは、初期の段階で明らかでした。そして彼の関心を惹きつけるなら、綺麗なグリーンのグラデーションだけではダメだということも。技術とコンセプトがMikeに知らされた日、彼はコンピュータの前で娘を抱き、どんなバイクが出来上がるのかを見せました。私たちがフォーミュラ 1以外では使われたことのない独自の技術を使うことが、彼をどんなに興奮させたかお分かりかと思います。S5が発表された日、「塗装について驚くことは稀だけど、CervéloのS5には畏怖の念さえ抱いたよ」とMikeはInstagramアカウントで語りました。残念なことに、2017 ツール・ド・フランスの第4ステージの最終スプリントで、今ではよく知られたクラッシュのために思い描いた通りのレースはできませんでしたが、MikeとCervéloはこの塗装技術に確信を得ました。そして私たちは、優れた材料の利点を活かしたまま、翌年に僅かに変更を加えたバージョンを発表したのです。

プロの集団とオリンピックは、私たちがデザインの限界に挑むことを証明する良い例です。限界に挑戦し続けることで、私たちは知識を蓄積し、お客様により良いパフォーマンスを提供することができるのです。塗装は私たちのビジネスにとってとても重要です。Silverstone Paint Technologyのようなパートナーのおかげで、私達はただ追随するだけでなく、自転車のエンジニアリング分野で一歩先を行くことができるのです。