Chris HallのPシリーズ カスタムビルドの舞台裏

執筆:Andy Richardson

 

先月Chrisに 同行 してM40を北上し、悪名高いヘールズオーエン自転車競技場​で彼の新しいPシリーズの制作現場を垣間見ることができたのはラッキーでした。妙なことに、私はずっとPシリーズはトライアスロン向けのバイクだと認識してきたので、ヘールズオーエンを時速45kmで飛ばすところを目にして戸惑いました。

好きな高速道路サービスやNetflixのリアリティテレビ番組をお互いに挙げたり、ツール・ド・フランスのすべてのステージで毎日107マイルを走破する彼の次のアドベンチャーについて話を聞いたりしながら、インタビューのネタになりそうな質問もいくつか投げかけてみました。

Andy Richardson(以下「AR」):さて、バイクについて話を聞かないといけませんね。Pシリーズは徹底したトライアスロンバイクだと私は受け止めてきました。でも、P5ではなくPシリーズをTTバイクとして使っていますね?

 Chris Hall(以下「CH」):日曜の朝に私が変な目で見られる理由はそれでしょうね。自分はユニーク(かつ変わった)ポジションにいて、PシリーズにはP5にはない幅広い柔軟性があります。フロントエンドは標準のベースバーと普通のステムが付いていて、こういうユニークなセットアップで独自仕様でない標準の部品を使えるのはとてつもない価値があります。イギリスではタイムトライアルはCTT(Cycling Time Trials)が運営しているので、よりスピードを上げるためにバイクを調整する自由と柔軟性があります。

Chris HallのPシリーズ(スタンドアロン)

AR:ほかの人とどうポジションが違うんですか?詳しくないタイムトライアル派の人たちにも分かるように教えてください。

CH:空気力学の面から説明します。自分は専門家ではないですが、AerocoachのXavから分かりやすく教えてもらいました。ワールドツアーのライダーたちの大半は、タイムトライアルに臨むときCDA(空気抵抗値)は0.2程度です。空気力学のテストを受ける前、私のCDAは約0.23でした。ほとんどの人は0.25ぐらいで、自分は現在0.2161です。

私はカマキリのようないわゆる「ハイハンド」のポジションをとります。誰にでも勧めるわけではありませんが、自分にとっては速くなることが実証済みで、よりしっくりきます。私にとって長距離のタイムトライアルでは、そこがより重要なのです。

AR:それほど大事には思えませんが、あなたの表情を見ると見当違いなのは自分の方だとはっきり分かります。

CH:その通りです。0.23と0.2161のCDAの差は、10マイルのTTで30秒のスピードアップに相当し、時速45キロで19.1ワットの改善になります。12時間のTTでは、最大6.5マイルにもなるんです。

AR:30秒ですか?それはすごいですね。

CH:ええ、タイムトライアル派はまるで変わり者のように思われています。ちょっと体重を減らしたり、少し肩をすくめて頭を下げればいいものを、最も理不尽で小さいアップグレードにお金を使うからですが、そういうことではないのです。わずかな違いが積み重なって大きな結果を生み出します。週に1度のクラブでの集まりでは分からないかもしれません。でもTTでは、3位からトップに躍り出る可能性もあるのです。

AR:でも、なぜタイムトライアルにそこまで入れ込んでるんですか?特殊な競技で、タイムトライアル派は変わり者が多いのに、あなた自身はそうではないでしょう?

CH:タイムトライアルの競争の激しさが好きですね。自分のベストを当日に出し切れるかが勝負です。自分とタイムシートのせめぎ合い。他の選手のタイムがどうなろうと気にせず、自分が伸びていることを確かめたいんです。そこが好きですね。頑張った分だけ結果に返ってくるところが。

誰にでもとっつきやすい競技でもあります。高級なTTバイクは必要ありません。自分の力を目いっぱい出せれば、どんなバイクでも大丈夫です。肝心なのはそれだけです。

それから、本来の姿を追求することもできます。私はスピードを出すのが大好きで、アドレナリンがどっと出るのを感じます。数年前の25マイルのナショナルレースでは、過去最高の記録を出せました。ある下りのセクションでは時速80kmに達しました。自分の足で動かすジェットコースターに乗っているようなもんです。時速80kmに達して、スーパーマリオの星の音楽、パワーアップして光り出すときの音が聞こえてきたんです。今ではTTバイクに乗っているときに聞こえてくるのはそれだけです。

バイクに乗ること自体が好きなので、いろいろな機会を楽しんでいます。競技という一面、それに探検という両面ですね。

トラックでPシリーズに乗るChris Hall

AR:今年は明らかにレースが少ないですが、中止にならないことを祈りつつエントリーしたレースはありますか?

CH:6つか7つのレースにエントリーしていましたが、全世界を巻き込んだパンデミックのせいでどれも中止になりました。中止の決定は賢明だと思いますし、一部のレースが再開されつつあるのはうれしいことです。来年はそれなりの数をこなすつもりです。10マイル、25マイル、100マイル、12時間と24時間などのレースを織り交ぜることになるでしょう。

AR:では全部ですか?

CH:ええ、レースの時間に関係なくTTが好きです。自分のポジションについてはっきりさせたことのひとつに、距離や時間よりも持続可能で空気力学を重視した点があります。

AR:そうですか。(後になって実感する)タイプ2の楽しみという感じですね。グラベルのライドをさんざんやった後で、バランスが保たれるといったところでしょうか。冷え切ったグラベルのアドベンチャーの楽しみと、24時間のタイムトライアルのような「楽しみ」のように。

CH:まさにその通りで、そこが大好きなんです。サイクリングは手軽にできて、勝敗を競うのでなければルールもありません。ただ乗って走ればいいんです。いろいろな競技を混ぜて試してみるのが、ずばり王道でしょう。自分は「何でも屋」的なところがあります。どれをとっても平均的なレベルで、スペシャリストとは言えません。さまざまなチャンスを受け入れ、いろいろなタイプのバイクで幅広いライドを楽しむタイプです。違う環境に対応することで、本当の意味でバイクを自分のものにすることができます。

AR:でもタイムトライアルは?

CH:ええ、タイムトライアルは好きですが、サイクリング全般が大好きということです。

AR:あなたのバイクについて、どこが特別なのか教えてください。

CH:自分のポジション以外では、どれもマイナーで小さい変更ですが、自分にとってパフォーマンスとスピードを上げるための調整です。25/23mmではなく、28mm Schwalbe Pro One TTタイヤを使っています。Xav(Aerocoach)がタイヤの幅とブランドをすべてテストして、28mmはわずかに遅かったのですが、はるかにバンクに強いのと快適さが全然違いました。TTで24時間も乗るのなら、ちょっとぐらい遅くても前進している方が、パンクで路肩に座っているよりずっといいですからね。

余計なストレスがないし、あとは乗るならチューブレスですね。今後はずっとこれでいきます。転がり抵抗が小さくて、パンクしても気づかないぐらいです。2018年にあったナショナルの24時間TTでは、レース終了まで気づきませんでした(疲労で気を失って意識が戻った後の話です)。

ディスクブレーキも自分にとってかなり重要なポイントです。TTバイクにはディスクブレーキは必要ないという人ばかりなので、自分はその代表格になるとは分かっていますが、試してみるべきですね。TTバイクのブレーキ性能はかなり評判が悪いです。ブレーキをかけるまで待つ時間が長いほど、パワーをかける時間も長いと私は認識しています。

私はレース用のホイールでトレーニングするので、ブレーキの表面が摩耗したり破損していないか知りたいです。レース用ホイールでトレーニングすると、様々な状況でのバイクの感触や走りもつかむことができます。深い断面やディスクホイールは、浅い断面のホイールとは感触が全然違います。同じことがキットとヘルメットにも言えます。レース当日には予期しないトラブルがない方がいいです。

ほかに言うべきなのは、Zero Lemonのグラフィック「*for that extra bit of bling*」をあしらったAerocoach AEOXホイールを搭載したShimano Dura-Ace Di2に乗っていることでしょうか。自分の体験と風洞でできたデータをもとに、自分でパターンをデザインしました。そして、Aerocoach Vantaggioエクステンションは、自分の変わったポジションのためにチタンにカスタムプリントされています。それで役に立ったのが、こうしたカスタムのエクステンションがあるおかげで自分の両手がいつも完全に支えられていることです。言わば前かがみの姿勢になって、速さと快適さを両立させることができます。心地よい上に、自分としてはバイクとより一体になった感じがします。

AR:それは面白い話ですね。ところで『Below Deck』は見ましたか?